政経倶楽部第54回例会
日時:2009年6月12日 開会:~ (開場:)会場:ルポール麹町 東京都千代田区平河町2-4-3 TEL03-3265-5365 有楽町線「麹町駅」 1番出口より徒歩3分. 有楽町線・半蔵門線 「永田町駅」 5番出口より徒歩5分.
代表幹事挨拶 寒竹郁夫氏(デンタルサポート株式会社代表取締役)
当会の基本理念は日本再生であり、基本戦略は政権交代である。国の政治経済システムを正常化させるには、それが必要不可欠と考える。政権交代は、もう前夜と言われ、あとは国民がそれに気づくかどうかまで来た。当会のような、政治を前面に出し、かつ明確に政権交代を掲げている経営者の集まりは、日本でもなかなかない。だいたいの団体は政治をマスクし、事業機会を求めて異業種交流をしている。明治維新も30人くらいで成されたと言われるが、平成維新もこの30人がやるのかもしれない。更に、吉田平・副代表が知事選に出たように、実践に落としている。それだけ貴重な団体だと思っている。今後は国の戦略を明確にするべきだ。リーマンもクライスラーもGMも破綻した。もうアメリカから自立すべき。いまはアメリカの言う通り、毎年の年次改革要望書に沿って日本の改革は進んでいる。そういうこともマスコミは全く伝えないので、国の進路についても、経営者が勉強していかねばならない。
顧問講演 林英臣氏(政経倶楽部顧問)
私はかねてから、早く20世紀を終わらせ、21世紀を始めなければいけないと訴えてきた。GM破綻などの流れは、20世紀の終焉を意味していると考える。19世紀はイギリスの世紀で、ビクトリア女王時代はイギリスの天下だった。20世紀はアメリカの世紀となり、その冒頭の1908年、GMは創設された。GMはアメリカ流の大量生産、大量消費という、物欲拡大資本主義を象徴してきた。そのGMが終わったのは、20世紀の終焉を象徴している。ではこれからどうなるかだが、私は10年前に、2010年頃に日本は底を打つと予見した。そして実際、2009年のいま、日本は底に来たことを、我々は体験している。
この底は、今後10年ほど続くだろう。歴史を見ると、世の中が大きく変わるときは、2段階の変革が起きている。前半は破壊で、その地ならしを経て、後半に建設が行われる。フランス革命でも、まずアンシャンレジームの破壊が進み、ロベスピエールが恐怖政治を行う。その後ナポレオンが台頭し、資本制フランスが建設された。2009年は、古い体制に対する破壊が始まると考える。1,2年では済まない。今後10年ほどは、腹をくくって、日本の難局を乗り越えなくてはならない。その前に自分が流されては話にならないので、まずは自分の確立が必要だ。2020年頃、未来への光が見えてくる。それをただ傍観するのではなく、新しい日本への人づくりを、政経倶楽部と共に、いま政治家天命講座でやっている。
1この講座は、1年で終わりではない。むしろその期間はプレであり、その後に正式メンバーとなって活動に加わる。これは松下政経塾が、本当は卒塾してからこそ一緒に動くべきなのに、卒業したら終わりとしてしまった反省からだ。講座が終わって初めて一人前として認められる。そこで天下を変える侍として、命を懸けることを決意した人が、晴れて塾士となる。全国の、イキのいい若手が集まっているので、必ずや期待に応えられるはずだ。講座で教えていることは、突き詰めれば、原点と大局。政治家は思想がなければ、政治屋となってしまう。そこで原点として、東洋思想や日本思想を話している。大局においては、文明観、更に明治以降の日本史を見直している。今日の日本の問題点、東京一極集中や官僚主導などは、明治以降にある。
資本主義の次に来るものをよく聞かれる。それは、資本ではなく天地自然の原理を活かす「天本主義」、温もりのある地域共同体(仲間)に依拠した「地本主義」、人を大切にする「人本主義」へと移行せねばならないと考える。日本史上最も厳しい転換期の今だからこそ、チャンスを見出す仲間として、政経倶楽部を盛り上げたい。
講演 山田厚史氏(朝日新聞 シニアライター)
『衆院選間近!その行方如何に』
鳩山邦氏は明らかに自分のことを考えていた。どっちに転んでもいいようにしていると感じる。党人ならもう少しきちんとした身の処し方、発言の仕方があるはず。それをたしなめる人もいない。自民党は既に、政党としては賞味期限が切れている。今の自民党の政権基盤や、長期政権で作ってきた産業構造、外交関係、これら全ての賞味期限が切れている。自民党とは、戦後体制を象徴した存在。しかし今後、自民党が壊れたときに、どこが受け皿になるのかが見えない。だから国民も積極的に壊しにいけない。これはメディアの責任でもある。メディアは民意の代表、あるいは触媒だ。世の中の向かうべき変化を、速めていくのが、メディアの役割だと思う。それが十分果たされていない。
元来自民党は、戦後アメリカが日本を反共の防波堤にするために、アメリカが作った政党。だからアメリカも歴代サポートしてきた。その中で独立と戦後復興、高度成長を成し遂げた。これは功績だ。しかし1945年から15年で復興を遂げ、60年安保が起こった。次の15年で、70年代オイルショックを持って、高度成長を終える。そのあと15年で、91年のバブル崩壊となり、細川政権となった。約15年ごとに、大きく変わってきた。15年は、人々の意識が変わる周期。幕末も1853年にペリーが来てから、1868年に明治維新が起こるまでが、やはり15年だ。その自民党は90年頃、宮沢政権で役割を終えた、と考える。89年に天安門事件、ベルリンの壁が崩壊し、91年ソ連が崩壊、冷戦は終結した。宮澤さんが、自民党の最期を看取って、細川さんになった。その意味で小泉さんは最後の花火だった。
アメリカも冷戦後は、自民党でなくても良くなった。もちろん日本への影響力は必要だが、非効率な自民党に限らなくても良くなった。いま世襲問題が議論されているが、自民党政権で政治家が家業、既得権になってしまい、社会全体に活力がなくなった。細川、安倍、福田、麻生など、せっかく総理大臣になっても、イヤになったらぶん投げてしまう。麻生さんも、なるべくしてなった人ではない。吉田さんの孫でなかったら、絶対政治家にもならなかったし、首相にもなってないだろう。皆、そう思っている人が、日本の総理。「外交の麻生」というのも、本当に自民党議員が、麻生さんに意見の面で合って盛り立てているかといえば、全くそうではない。そういうことを腹に納めつつ「麻生さん」と囃している。いまこれだけの難局の中でそんな"じゃれ合い"をやっていては良くないと、国民は皆わかっている。権力を握っていると、捜査権も解散権もあり、競争は公平ではない。今回も15兆円ばら撒いている。でもそんなことをやっていていいのかと、国民もわかっているので、そろそろ賢明な判断をするだろう。
ただ日本国民は自分たちで政権を作ったことがない。明治維新も民衆が蜂起したわけではない。血や汗を流した中国や韓国とは違う。ゆえに、待ちの姿勢になりやすい。自民党自身から「僕らを変えて!」というメッセージを出しているのだが、国民が落としに行かないため、今のようになっていると思う。メディアにも責任はある。世界では、記者は命を落としている。しかし日本ではそういうことはない。お金と女性問題だけ脇を閉めていれば、安全。記者クラブにぶら下がっていると、相手先への遠慮があるため、辛口なことが書けない。しかし、そういうメディアを乗り越えて、国民が動くときが来たと思っている。戦後、選挙が実施されているのに本格的な政権交代がない国は、日本とメキシコくらい。メキシコは次に交代の見込みなので、残りは日本だけとなる。日本は政権交代が起こせるか、反米になれるかはわからない。また交代したあと、どういう政権を作るのかがまだ見えない。全ての歴史は2段階革命。中国がその典型。政権交代は日本の変革の第1幕だろう。自民党が下野し、もう息を吹き返してこないと思ったとき、次の変化が始まる。林先生が言ったように、10年くらいごちゃごちゃの争いがあると思う。
今後政策を考える軸は5つ。
市場機能派VS人為的規制派
グローバル拡大VS国ごとのローカルな慣習尊重
成長優先VS分配優先
生産者重視VS消費者重視
マネー・数字尊重VS文化や個性尊重
アメリカは、市場派・グローバル派。小泉・竹中も非常にクリア。自民党は市場主義にガラッと変わった。従来の自民党は、規制派・利益配分優先だった。なお、いまの麻生・与謝野さんは規制派で増税派。グローバルで頑張ってもらう前提。社民・共産は一番わかりやすい。規制派・ローカル保護・分配重視・消費者主権・くらし重視。小泉竹中路線と正反対。民主がよくわからない。一部市場派だが規制も必要、グローバルも大事だがローカルも、分配重視、消費者も企業にも頑張って欲しい… どういうことをやるのかがごちゃごちゃになると、クリアにならない。ここをどうするのか、どういう軸を出せるかが、この10年のポイント。
これからは行政と企業が変わるべき。これまで規制といえば、偉いのは官僚だった。政治家は外、番頭(=行政)が中だった。しかし番頭は生真面目なだけでビジョンがない。正解のないものができない。アメリカなどに先進事例があれば別だが、今は「坂の上の雲」といっても雲の中に入っちゃった。これからは、どの山に登るのかを決めるべきとき。それは番頭ではなく政治家の役割。小泉さんはこれがはっきりしていた。アメリカの51番目の州。実際、自民党は、ずっとそういう路線できた。アメリカのシンクタンクの友人は「日本はアメリカの保護領だ」と言っている。
GMは、アメリカ金融資本主義に潰されたと思う。アメリカの製造業の技術は低くない。しかしGMでは、社外取締役が強いし、3~5年先を考えて人や技術を育てる余裕がないため、技術力向上ができない。その結果GMは倒産した。GM倒産によって、日本の部品メーカーまで苦境になった。そうやって連鎖してしまうのが、グローバル経済だ。ただ、日米のどっちが得かといえば、アメリカ。いい暮らしができる。ケインズ「過大なる債務は返却されない」。アメリカの国際収支の赤字はすべて日本が補填しているが、もう返ってこないだろう。リーマンショックが示すのは、アメリカが自分たちの生産力を超えた国家になったということだ。クリントンは、普通と逆に、戦争しながら減税した。景気拡大のため。これができたのは、アメリカに資金が集まるからだ。どうやって集めたかといえば、生産性UP。製造業ではなく、金融業で。金融で資産バブルをやった。時価会計を導入して、収益に即反映できるようにした。資産価格があがれば、それを取り込めるようになった。そうして高い利回りを実現し、世界中から資本を集めた。日本もアメリカ国債を買った。でももうそんなことはできない。アメリカ自身も過剰消費ができなくなる。通常、GDPに占める個人消費は約6割だが、アメリカでは7割を超えていた。どうしてそんなことができたのかといえば、単に借金をしていたから。GDPで10%ほどの、消費過剰がある。逆に言えば、今後のアメリカの成長も10%は成長できないことを意味する。
今世界はアメリカ一極集中であり、ナンバー1だが、その力もだんだん下がってくる。ヨーロッパは、アメリカが放漫経営をしている危なさに気づいた。ただヨーロッパも危ないのは、国別の政治が残っていること。金融は共通化できても、財政は国別の統治が残っている限り、共通政策は難しい。実際、いまヨーロッパで言われているのは、国家の復権。市場経済は、上り調子のときはいいが、下りのときは政治が必用になる。日本でもこれからは規制、監督、ルールが大事となる。市場の暴走を止める。小泉竹中路線をみな批判する。ただし、護送船団方式に戻していいかといえば、そうではない。ゆえにまず一段階目の革命で、霞が関をきれいにすべきだ。国民目線で判断できる官僚を作らねばならない。政官業のトライアングルは無論必要だが、古い自民党の利権トライアングルは良くなかった。一度、護送船団をきれいにしてから、主権在民の官僚を作らねばならない。次に政治家が、理念ある番頭(官僚)と組んで、建設に取り掛からねばならない。方向は徐々に見えてきているが、そこに行くまでには、まだしばらく混乱があるだろう。まずは一度自民党に降りてもらう。それで自民党は利権トライアングルが作れないとわかったとき、一挙に壊れるだろう。アメリカでは政権交代は当り前のこと。チェンジは、変革ではなく、交代。民主党も自民党も、政策理念はほとんど変わらない。ゆえに、人品が大事となる。しがらみを切り、絆を作るべき。これから世界民族は大変な時期を迎えるだろう。軸は確実にアジアに来ている。北朝鮮も時間の問題。 となると、新しい地域主義、北東アジアをどうしていくかを考えていかねばならない。本当の意味での共栄圏を作らねばならない。ユーラシアの時代が来る。その大きな流れの中で、自民党が終わろうとしている。
質疑応答:田岡佳子氏(NPO法人 ランチェスター協会 理事長)
Q.北朝鮮がもうすぐ終わりというのは、どういう意味か。
A.朝鮮への経済制裁は間違っている。貧しい国はつぶれない。国が豊かになってこそ、すぐつぶれる。東欧が滅びたのは、自己崩壊。闇経済ができるには、ゆとりが必要。お金があると、仲間割れが起る。西ベルリンと東ベルリンの違いははっきりしていた。モノとお金と情報を入れれば、すぐ壊れる。拉致問題も、助けなくても大丈夫と思う。まもなく金主席は亡くなるだろうし、そうすれば国家は崩壊すると考える。
政治家天命講座報告 工藤裕一郎・塾員(横浜市議会議員)
現在関東4期生の1年間が進んでおり、政経倶楽部の皆さんには大変お世話になっている。月1回という限られた時間だが、密度の濃い勉強をさせて頂いている。また、卒塾したメンバーで、塾運営や、団体としての活動のあり方などを、議論し始めている。また関西の卒塾メンバーのひとりが、千葉市長選と同日の市長選に挑戦しており、関西では総力挙げて支援している。今後もますます政経倶楽部にお世話になると思うが、間違いなく皆様にお返しをし、そして日本に恩返しできるようになっていきたい。
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